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八月の傾斜

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大崎善生の短編『八月の傾斜』(『孤独か、それに等しいもの』に収録)
を読んで。

何というか、眩暈の世界。
主人公の石田祐子から私が受け取ったのは、眩暈と嘔吐と喪失。

クラクラするような気持ちのいい眩暈ではなくて、
倒れるためだけにある眩暈。

そして、彼女の嘔吐は、出口のない浅はかな黒い嘔吐。
サルトルや岡崎京子が描くような、「存在」に対する嘔吐では決してない。

それから、彼女の喪失は無意味。
初めから、彼女には何もない。
だから本当は、失うものも何もないはず。

大崎善生という作家は、なんか生きてんだか生きてないんだか分かんないような
人物を描くのが得意だな、と思った。
当事者性がない。
離人症的な人物ばっか登場してくる。
彼の書く文章の基盤が40代中年というところにあるのなら、
精神の意識(意志)も身体の意識(意志)も希薄になってゆくだけの、被影響性中年男性を
非常に危険なものに感じてしまう。
ほっとくと何をしでかすか分からないような、「若者」以上に自己チューな
狂気じみた投げやり姿勢に、私は恐怖を覚える。


cf.記憶とパイロットフィッシュ
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by epokhe | 2004-10-09 03:06
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