試論Records

epokhe.exblog.jp ブログトップ

デヴォーショナリア[祈り]

a0022584_18105534.jpg
さて次は、リアス&リートヴェークの『デヴォーショナリア[祈り]』(1994-2003)。
『デヴォーショナリア[祈り]』は、リオ・デ・ジャネイロのダウンタウンに生活するストリート・チルドレンやティーンエイジャーのための移動式スタジオという形で始められたプロジェクトである。
路上に暮らす人々と常に活動を共にするパブリック・エージェントやNGOを巻き込みながら共同作業を行うことで、この作業は1995年末まで続けられた。


a0022584_18131360.jpg
このプロジェクトに参加した600人余りの子供の手足をかたどった、白いワックスの型1286個の制作を記録した映像は80時間以上に及んだ。
子供達が型取りを行いながら希望や望みを伝える手段として、ブラジルの人々に良く知られた「エクス・ヴォト」というメタファーが選ばれたのだが、それは神ではなく社会に向けられたものである。
ちなみに「エクス・ヴォト」とは、ブラジルの民間信仰で病の治癒を祈念して教会に奉献する、自らの手足などをかたどったオブジェのことである。


a0022584_18152072.jpg
プロジェクト開始から8年を経て新たなヴィデオ・コンピレーションが制作されたが、その目的は過去のニュースや記事からの引用や、子供達との再会を通して、彼らのうちどれだけが依然同様の状態で路上暮らしを続けているのかを記録し、その事実に思いを巡らすことである。
再会を通して子供達は、他の参加者の何人が、昨年、殺害されたり亡くなったりしたかということを語る。
そして当時の記事からの引用によって、それら子供達のプライベートな物語は公の現実の中に位置付けられる。
8年を経て、デヴォーショナリアに参加した子供のほぼ半数が死亡していた。


a0022584_18171867.jpg
『デヴォーショナリア[祈り]』は、対話としてのアート、
或いはアートとしての対話だと感じた。
白いワックスでかたどられた手足が地面にひしめき合い、
そのざわめきが私に語りかけてくる。
その語りは、この型取りをしている最中に子供達が語った夢と、
殺されていく叫びの声・・・。


a0022584_1819029.jpg
『デヴォーショナリア[祈り]』の空間に、ひとたび足を踏み入れると、
私はなかなか逃れられなかった。
彼らに対して何か語りたい。
でも、何か語った途端に崩れてしまいそうになる。
路上で暮らす子供達が身体の奥底から発してくる表現を、
受け止めて返すだけの術がまだまだ足りない。
「殺(ヤ)らなければ、自分が殺(ヤ)られる」と言い、「愛情という感覚を持ったことがない」と断言する子供達は、私よりも「生きていた」。
[PR]
by epokhe | 2004-07-28 18:30
line

MAIL: epokhe@excite.co.jp


by epokhe
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite