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個性/核家族/実存的対決/自立

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以下、河合隼雄『対話する人間』より

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父権の地位を奪われ、
家庭のなかでも父性を失った父親の役割とは、何か。
それは、母親のよきパートナーであれ、ということである。
一般的にいって、父親は社会の生存競争のなかでしのぎをけずり、
人生の意味や意義を十二分に考える暇もなく死んでゆく哀しい存在でしかない、と思う。
いうならば“使い捨て”である。

それに対し、女性は人生に余力をもっているから、人生のほんとうの意味を、
ある年齢に達してからも追求していかなければ生きられない。
それに父親の役割後退に伴い、母親としての役割は一層拡大してきた。

こんな女性のパートナーをつとめるということは、至難のわざである。
しかし、核家族への道を選択したということは、
このような厳しい状況をも、あえて選んだということである。
これは大家族社会と比べると、非常にしんどいことだが、ある意味で、
くるしい方の社会をあえて選択したという自覚がいるのだと思う。

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個人が自分の意志で自由に生きられる核家族。
大家族社会においては、お互いが、個性など出さず、
もたれあって生きていれば良かったが、今日は、自分の個性を磨き、
自我の主張を前面に押し出さなければ生きていかれない時代である。
マイナス面を無視して、安易にプラス面だけを見て突っ走ってしまうと、
「こんなはずじゃなかった」となる例の一つが、この問題である。

家庭内の混乱はインテリの家で多く起こっているという。
これは当事者には分からないかもしれないが、
大家族社会という“なれあい”社会から、個性発揮の核家族への変革のエネルギーが、
インテリの家庭ほど、無意識ではあるが、強力に働いているからだ。
たいがいの親は、頭ごなしに反対するか、子供のいうなりになることが、
理解があることと勘違いする。
この種の失敗した例は、ものすごく多いそうだ。
これは、父親が理解力のあるようなふりをして、
子供に自分の意見を言う、いわば実存的対決をすることを怠っているのである。
実は、このことは、実にしんどいことである。
しかし、実存的対決なしには、子供の成長はないし、親子関係も成立しないのである。

互いの自立性が損なわれるのを怯えがちな世の中だが、自立と依存の共存は大切だ。
適切に依存し、依存の自覚と感謝のある人こそ自立している。
ただやたらに他と離れるのは、孤立であって自立ではない。
by epokhe | 2004-08-28 21:18
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